2015年9月12日土曜日

本日のクラスのワンシーン 2015/9/12 頭の中は話したいことでフル稼働

生徒も私もクラスやお互いに慣れてきて、最近はいい感じに緊張感がゆるくなったように思います。私はそれと同時に、生徒の様子を少し離れて観察できるようになりました。

最近クラスで感じるのは、学生の頭の中では表に出ないだけで、いろーーーんな事象が結びついていたり、言いたいことをどうにか言えないかとフル稼働しているということ。

例えば今日のクラスでは「~と言っていました」の復習の後、「~についてどう思いますか」と「~のが上手です」をやりました。

くまさんの自由質問:(合気道をやっているトニーくんに向かって)合気道についてどう思いますか。

トニーくんはそれに対する答えを何かしばし考えた後、「先生、二つの文をつなげるときはどうしますか」と質問。私が「”て形”を使うよ」というと、「そうじゃなくて、反対のとき」。それで「”~ですが”を使うよ」というと、ようやく「合気道はスポーツじゃないですが、いい武道だと思います」と答えました。

ちょっと意外だったのですが、質問したくまさんと何やらスペイン語で話し、二人の間では言いたいことが共有された模様。そして質問したくまさんに「あなたは(合気道について)どう思いますか」とトニーくんが質問し返したところ、それに対する答えは「filosófico, profundo y tiene muchas significados...(たぶん)」でした。
どうやらくまさんはメンタル的なことを言いたい様子。
それについてスペイン語で二人で意見を確かめ合った後、私に向かって「今言ったことを日本語ではどう言いますか」と質問してきました。
私は「哲学的(な形容詞)、深い(い形容詞)、たくさん意味があります」と答え、「これをて形でつなげれば言いたい文になりますよ」と言いました。
既習事項なので「Como era?(なんだっけ?)」を連発しながらなんとか「哲学的で、深くて、たくさん意味があります」と一文にしたあと、満足げにメモメモ。

ほかの練習では「○○さんはどんな人が好きだと言っていましたか」で元クラスメートとの会話を思い出し、何か言いたげな様子。そして「先生、はっきり覚えてないから、”~と思います”と一緒に使ってもいいですか」と聞いてきました。私は「もちろん!」と言い、「”~と言っていました”+”~と思います”」と板書。そして、両方の”と”の前が普通形になることを確認しました。
するとその生徒は「親切な人が好き…だ…と言っていました…言っていた…と思います。」
と、なんとか一文にすることに成功。私がルールと共に書いた板書をメモメモ。

なんか、語学の勉強って、こういうことなんだな~。としみじみ思いました。
言いたいことがある。
それを伝えるために言葉や文法を習う。
「言いたい!」という気持ちが学習を促進させる。
モチベーションになる。

このクラスの学習者たちは、既習文法に未習語彙を入れて、習ったことを使ってなんとか話そうとするタイプで、教師的には好ましいタイプです。

でも学習者の中には、言いたいことがあるのになかなか口から言葉が出てこない生徒もいます。知識が運用につながらないタイプ。一つの文を言うのにものすごく時間がかかって、正直待つ時間が長くなって授業の進行上困ってしまうことも。
でも、その子の頭の中もきっと同じように言いたいことをどうやって言ったらいいかフル稼働しているはず。

はたまた、言いたいという気持ちが先走って、文法も語彙もめちゃめちゃに話す生徒もいます。このタイプはあまり「お勉強」が好きではないから文法や語彙がしっかりしていないことが多く、「私の言いたいこと、わかるでしょ!?」と強気なことが多いです。こちらは言いたいことがよく分からないし、それが判明するまで質問し続けると時間がかかるので、こちらのタイプも正直困ります。
でも、その子の心は「今これが言いたい!」という気持ちで満ち満ちているはず。

いろんなタイプの学生がいます。
どのタイプの学生にも共通しているのは「今これを伝えたい!」という衝動があるということです。

私は教師として、その気持ちをどれだけ殺さないで生かせているのか、言いたいことがうまく言えなくてもどかしい気持ちをどれだけサポートできているのか。「困る」とか言ってる場合じゃないです。
もしかしたら、教師である私が不用意な言葉や態度でその気持ちをしぼませてしまっていることもあるかもしれません。
言いたいことをこちらが引き取って全て(正しい文にして)言ってしまうのもその子の日本語力向上のためになるとは思えませんし、かと言って、自力できちんと意味が分かる文が言えるまで待つのも時間がいくらあっても足りません。すべてのタイプに気づきと自信を持たせることができたら、それがいちばんいいと思うのですが、まだどうすればいいのか模索中です。

答え探しは当分続きそうですが、そういう気持ちを持って授業に参加してくれている生徒たちに感謝です。